3月13日は研修のお仕事でご訪問した久慈広域連合消防本部で、
通信指令センターや消防車を見学させていただきました。

今回はその見学記です。

※研修の記事はこちらです。
(1日目)広域連合の消防本部様でハラスメント防止研修の講師を務めました(岩手県久慈市)
(2日目)広域連合の消防本部様でハラスメント防止研修の講師を務めました(岩手県久慈市)
※過去の見学記はこちらです。
工場見学ヒストリー(備忘録)

広域連合とは

広域連合というのは、ひとつの市町村では単独で運営が困難な、ごみ処理や消防、火葬、介護などの事業を近隣の自治体が合同で行うための組織です。私は以前、仙南地域広域行政事務組合という宮城県の組織でも消防職員さんの研修を担当したことがあります。たとえば石巻で見かける消防車にも「石巻広域連合」と書いてありますよね。久慈市広域連合は久慈市と洋野町(ひろのちょう)、野田村、譜代村の一市一町二村で構成されているそうです。

実は私の長男も消防の仕事をしているのですが、関東在住のため会って話をする機会も少なく、仕事の話を詳しく聞いたことがありません。そんな中で今回は「消防署の中をご案内しましょうか?」とお声がけをいただき、二つ返事で「ぜひ!」とお願いをいたしました。

高機能消防指令センター

パンフレットより転載

高機能消防指令センターを見学

個人情報が写るかもしれないので写真撮影はできませんでしたが、最初に高機能消防指令センターを見せていただきました。消防署のオフィス部分の通路を挟んで向かい側にブラインドで目隠しされた部屋があり、到着した時から「ここは何だろう?」と思っていましたが、その中が指令センターでした。

掲載した写真は完成時のパンフレットから転載したものなので、現在はもっといろいろな機材が置いてあり、写真よりも充実?している感じです。通常は中に入れないそうですが、今回は研修参加者の職場を実際に知るという意味もあり、特別に室内に通していただきました。

中に入るとちょうど緊急電話が入っており、リアルタイムで職員の方が対応していました。その後、あっという間に救急車がサイレンを鳴らして出動していきました。この部屋で電話を受ける方は皆ベテランの方ばかりだそうです。この業務専属とのことで、消火や救命には携わらないというお話でした。

パンフレットより転載

固定電話なら発信元を瞬時に特定

平成24年3月にできたこの設備は、家の固定電話から電話が入るとすぐにその場所が特定されて地図に表示されます。携帯電話の場合は、その端末からの電波を拾っている基地局をまず特定してそこからGPS等も活用しながら絞り込んでいくためもう少しかかるそうですが、なるべく時間がかからないように色々な手法を駆使されているようです。

災害時は柔軟に対応可能

この設備が完成したのは東日本大震災の翌年です。そのため大きな災害にも対応できるように工夫されていて、普段はひとりで4台のモニターを使いますが、電話の本数が多いときにはモニターを1人2台に変更して、倍の人数で対応にあたるとのこと。

震災前に計画されていた設備ですが震災を機に、当初は計画になかったUPSも設置することができたそうです。
ご案内をしてくださった大粒来(おおつぶらい)消防長はこの設備が設置された当時は担当係長だったとのことで、大変思い出深い設備であることを話してくれました。

消防車を間近で見学!

研修前の短い時間を利用してのご案内だったため、
メモは取っておらずすべて記憶が頼りの文章です。
間違っていたらすみません。
ここでご案内してくださる方が大粒来消防長から
工藤消防司令にバトンタッチされました。

はしご車

はしご車

・長さは25mと伺った気がします。首都圏など高層ビルが多い都市はスルスルと直線に延びるはしご車が使われるそうですが、こちらではくの字に曲がるタイプだそうです。種類によって稼働域が異なるというお話でしたが、どちらがどうだったのかはメモを取っていなかったため忘れてしまいました。すみません。

拠点機能形成車両

正面が拠点機能形成車両

・ご案内のあとを付いていくと、久慈消防署の消防車なのに「総務省消防庁」と書いてある車両の文字が気になりました。「あれは総務省と書いてありますが、借り物なのですか?」 ← 常々思いますけど、私が見学モードに入ったときの質問ってかなり失礼ですよね💦

・ですが”当たらずも遠からず”で、これは拠点機能形成車両といって、総務省消防庁が全国9消防本部に配備(無償貸与)したものとのこと。大きな災害に備え、中には100人規模での宿営が可能な資機材が積載されています。

・大型テントなど、収納されている主要装備はこちらをご覧ください。

パンフレットから転載

・上の写真はパンフレットから転載したものですが、拠点機能形成車両はこのように荷室が片側に2.1mせり出して、大きな事故や災害の対応に当たる隊員さんたちの休憩所や指揮本部になるそうです。
・先の震災では全国各地から派遣された緊急消防援助隊員が十分な後方支援を受けられず、被災地で寝泊りする過酷な環境が心身を大きく疲弊させました。100人分の宿営装備を備えたこの車両はその反省を踏まえてつくられ、東北では久慈消防署が初めて配備されたそうです。詳細は以下のニュース記事でご確認ください。

(参考)【ZOOM東北 岩手発】東北初の緊急消防援助隊「拠点機能形成車両」 - 産経ニュースInternet Archive

・先ほどの高機能消防指令センターもそうですが、東日本大震災を経験したことで大災害の規模感が大きく変わり、以後の機材には震災時の反省や要望が随所に活かされていることを痛感しました。
・ちなみにこれほどの車でも車両としての乗車定員は2名とのこと。人を運ぶ車ではないということですね。

・今回初めて知りましたが、久慈には日本全体で3日分(岩手県なら1年分)の石油を保有している国家備蓄基地があるそうです。久慈に東北で最初に配備されたのは、そういう事情も関係あるのかも?と個人的に思ったりしました。

ポンプ車

ポンプ車

・ポンプ車には大量の水が積んであり緊急時には飲料水としても使えるそうです。そのため定期的に入れ替えをしており、地域の災害で山間部が断水したときには給水のために4往復もしたそうです。中の水は本気で放水をすると(確か)4分間で空になってしまうため、その間に消火栓につながなくてはいけないとのこと。

・座席は写真で見てもわかる通りとても高い位置にあります。そのため昔の消防車は中で立つことができませんでしたが、最近の消防車は屋根を少し高くしてギリギリ立てるようになってるとのこと。久慈消防署では狭い道にも入れるようにこれより一回り小さいポンプ車もありました。

救助工作車

救助工作車

・火事で逃げ遅れた人や、交通事故で車にとじこめられた人などを助ける救助隊が乗る車です。奥に見えるポンプ車よりも屋根がかなり高くなっているのは、室内で立って作業をするためです。
・実際に車に乗せていただきましたが、確かに中は思ったより広く、救命のための用具がいっぱいありました。

救助工作車の後部座席部分
救助工作車の運転席

短い時間でしたがありがとうございます

最後に案内をしてくださった工藤消防司令と記念写真を撮らせていただきました。
(工藤消防司令はなんと元甲子園球児。現在も子供たちの指導に当たっているそうです。)

今回、私が驚いたのはどの消防車も皆ピカピカでまるで新車のようだったこと。「どれも新車のように見えますが?」とお尋ねしたら「普段から手入れを怠らず外観も新車のように磨いています」というお話でした。

消防車とひとことで言っても様々な種類の車両があるのですが、私たちはあまり違いを意識してじっくり見たことがありません。「消防」というと火災消火のイメージが強いのですが、市民の命と財産を守るのが消防の仕事であることを強く実感しました。
30分という大急ぎの駆け足見学でしたが、印象に残った事を書き留めました。大粒来消防長、工藤消防司令、このたびは大変ありがとうございました。