東ソー・クオーツ様_KIMG4426

山形県の石英ガラス製造会社「東ソー・クォーツ株式会社」の米沢工場を見学させていただきました。

この日の午後、同社の女性社員研修の講師を務めるため、せっかく伺うなら研修の前に工場を見せて頂けないか担当者(友人)に相談して快諾をいただいたものです。

これまでの工場見学ブログはこちら

今回の研修を担当してくれる友人は米沢ではなく山形工場(本部)のほうに勤務しています。

東ソー・クオーツ 山形本部・山形製造所

山形工場の製品は3月に今回の研修の打ち合わせでご訪問したときに見せていただきました。

このときは見学担当者が不在だったため、あいにく山形工場は見学できませんでしたが、「研修会場が米沢なので米沢工場を見学しては?」とアドバイスがあり、さっそく係の方につないでいただきました。

そしてやってきた6月9日。

私は米沢の八幡原(はちまんぱら)という工業団地にある東ソー・クォーツさんの米沢製造所に到着しました。

米沢八幡原中核工業団地案内図_KIMG4418

3月に山形工場で打ち合わせをした時には雪でしたが、今日の米沢はとってもいいお天気です!

東ソー・クォーツ米沢工場_KIMG4420

課長さんに説明していただきました

ここからは先は写真を撮れないので文章だけになりますが、説明してくださったのは製造課の齋藤課長さん。

同社がまだ米沢クォーツという名前だった頃に親会社の前身である日本石英ガラスから出向してきて米沢製造所の立ち上げに
一から関わってきたそうです。

齋藤課長には見学前に東ソー・クォーツの歴史や特長、そして業務内容などをスライドを見ながら説明していただきました。

製造ラインを軽く案内していただく程度…と思っていたので、プロジェクターを使ったマンツーマンの豪華な?説明にちょっと感激。

ちなみに東ソー・クォーツの東ソーは親会社である東ソー株式会社の旧社名「東洋曹達(ソーダ)株式会社」から来ています。

ソーダというのは苛性ソーダなどのナトリウム化合物とのこと(Wikipedia)。曹達(ソーダ)は当て字ですが歴史的に化学関連の会社名につかわれているようです。

不純物がゼロに近い高純度のガラスを製造

東ソー・クォーツさんで製造しているガラスは非常に純度の高い石英ガラスで不純物がゼロに近い高純度だそうです。

普通のガラスが様々な成分でつくられているのに対して石英ガラスはほぼSiO2(二酸化ケイ素)だけでつくられています。

そのため石英ガラスは他のガラスには見られない優れた特長を持ちますが、Wikipediaによると東ソー・クォーツさんは
その製法を考案し、日本で初めて工業化した会社のようです。

石英ガラスの主な特長_スクリーンショット 2018-10-29 06.46.05
東ソー・クォーツHPより

私は3月に山形のほうで友人からも同じ説明を聞いたのですが、残念ながらすぐにはピンと来ませんでした。

私の中ではガラスと言えば窓ガラス(笑)

友人によると東ソー・クォーツさんの製品は医療用のガラスや実験装置や半導体メーカーなどで使われており、中には人が入れるぐらいの大きさのビーカーなどもあるとのこと。

ですが私の暮らしとはあまり関連がないので、そう聞いても「ふーん」と思うのみ・・・

それに個人的な違和感としては、山形県内に工場が3か所あり、しかも親会社の東ソーさんも大きい会社のようなので(?)「医療や実験などでつかわれるような精密なガラスをつくっている」という説明と大掛かりに感じる会社の規模が合わない感じがしたんですよね。

(たぶん3つの工場は別々の製品をつくっているのかもしれませんが)

高純度のガラスはなぜ必要?

けれどその謎は、齋藤課長の説明ですぐに解けました。

東ソー・クォーツさんのガラスは熱に強いことから半導体や液品の製造工程の冶具にもつかわれているそうです。

一例としてシリコンウェハーを処理するときの冶具にもつかわれているというお話でしたが、そう言われるとすごくピンと来ます。

余談ですが今から30年も前にNHKで放送された「電子立国日本の自叙伝」という番組では半導体の原料であるシリコンの純度をあげるための多大な苦労が描かれていました。実は私、本も持っています。

半導体は電気的に非常にナーバスな製品なので確かに冶具のほうも半導体に影響しないように同じぐらいの純度を保つ必要がありますものね。

友人は「(管理課の)私よりも現場の人のほうが詳しく説明できる」と言っていましたがまさにその通りでした(笑)(Oさん、ごめんね)

ちなみにそういった名のある化学工場がなぜ山形県にあるのか?という疑問も湧きましたが、私がメモした齋藤課長の話によると「創設者が山形出身」というお話でした。けれどそれに関してはどなたを指しているのかわかりませんでした。

東ソー・クォーツさんの源流をたどって、たどって、たどっていくと大正14年に設立されたフェロアロイ製造鉄興社という会社に
行きつきますが、この会社は東北電化という会社で技師長をしていた佐野 隆一さんという方が起こしたもので、佐野さんは石英ガラスの製造で東北大学の教授と共同研究されていますので、いずれにしても東北とはゆかりの深い背景があったのだと思いました。

工場の中を見せていただきました

課長さんのスライドによる概要の説明が終わりその後、工場の中へ。

純度の高いガラスというのはどんなに厚くても色が透明なんですね!

私が想像するガラスは厚みが増すと緑がかってくる気がしますが純度が高い場合は厚みが増しても色味がまったく出ません。

平置きされた数メートルもあるガラス板の切り口(断面)を「覗いてみてください」と言われて横から覗いてみると、反対側の切口(断面)のところで齋藤課長が手を動かすのが見えました。クリアです。すごい。

また、見学者用の展示だと思いますが1立方メートル(縦・横・高さが1mぐらい)のとても大きな石英ガラスの立方体も見せていただきました。で、これがすごく不思議なんです。・・・

薄い外側のふちだけがあって中味がまったくの空洞に見えるんです。面白い。本当はガラスの塊なのに薄いガラス板でできた空っぽの大きなガラス箱のように見えます。

高純度の石英ガラスってこれだけの大きさの塊でも感じ取れるのは表面の部分だけで、一見「何もない」と思えるぐらいの透明度なんですね。

私の手元のメモには「液品マスク用合成石英基板」と書いてあるのですが(?)、これは半導体などの回路を転写するときに使われるもので、個人的にはネガフィルムの役割と感じました。見せていただいたガラス板はその原料になるそうです。

東ソー・クォーツ米沢製作所の石英ガラスは半導体の生産量が世界的に増えるに従って出荷量が増し、課長のお話によると「昔は通路だったところも今はどんどん製品置場に変わってしまい手狭に感じる」とのことでした。

2018.10.29追記

久しぶりにこの記事を見直し、言葉の曖昧なところを検索で調べてあちこち修正していたら東ソー・クォーツ、米沢製造所の能力増強 40億円投資スクリーンショットという日本経済新聞の記事に行き当たりました。

今年の3月の記事ですが、私が見学した昨年の夏にはもう同じ敷地に新工場の新設が決まっていたのかもしれませんね。

ガラスと言えば窓ガラスしか想像できない私でしたが、東ソー・クォーツさんの工場を見学してガラスの中でも石英ガラスは工業的な役割がとても大きいことがわかりました。

最後に余談になりますが、この記事を書くにあたって色々調べたところ、東ソー・クォーツの源流である(株)鐵興社という会社は(今はありません)酒田の花王の源流でもあることがどこかに書いてありました。なるほど、だから酒田に花王の工場が!

工場見学を通じて知らなかったことを知り「なるほど!そういうことか!」と思う瞬間がとても好きな私でした。