今頃ですが、河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙 (文春文庫)
(単行本2011年10月発行、文庫本2014年3月発行)を読みました。

 

東日本大震災があった3月11日が近いからではありません。
先日の秋田出張時、新幹線に乗る前に、
仙台駅構内の書店に立ち寄ったところ、
文庫本の人気ナンバーワンとして、
クライマーズ・ハイ (文春文庫) が重点陳列されており、
「そういえば、ベストセラーだったのにまだ読んだことがない」
「評判がよかった小説だし、この機会に、読んでおこう」
と、単純な好奇心でそちらを先に購入したのがきっかけです。 

 

 

クライマーズ・ハイは評判通り
重量感のあるいい小説でしたが、
読み終えた後に、そう言えば、
震災下の河北新報社を描いた
ドキュメンタリーの本があったはず・・・
と、無性にそちらを読みたくなりました。

 

クライマーズ・ハイは
単独の墜落事故として世界最多の犠牲者を出した、
日航ジャンボ機墜落事故に対峙した群馬県の地元紙と、
その記者たちを描いたフィクションですが、
河北新報のほうは実話です。
あの日、地元の新聞社と記者たちは、
実際にはどんな様子だったんだろう。

 

クライマーズ・ハイは、
地元紙の記者だった著者の実体験に基づくものですから、
完全なるフィクションとは言えませんが、
それでもなお、小説ではない本物の真実が知りたくなって、
クライマーズ・ハイを読み終えた高いテンションのまま、
すぐにKindleで河北新報のいちばん長い日 を注文した、
というのが真相です。
でも、そういえば、今って3月だったんですね。
今年もあの3月11日がやってくるんだなぁ・・・

 

 

*    *    *    *

 

河北新報は何十年も我が家に届けてもらっている新聞ですが、
正直言って、河北新報社の個人的なイメージは、
それほどよいものではありませんでした。

 

20代の時、今から30年以上も前に、
広告制作の仕事に携わっていたときは、
河北新報の広告局の雰囲気がどことなく尊大で、
私達のような制作事業者にはなんとなく冷たく感じたし、
「河北はプライドが高い」「殿様商売」などと、
仲間内で揶揄されることも多かったからです。

 

なので、読み進めながらも当初はどこか違和感があって、
Amazonで高評価のレビューを目にしても、斜に構えて、
県外の人だから好印象なのではないか?などと思ってしまいました。
私だってもし、宮城県以外の他県の地元紙の奮闘を読んだら、
無条件に好感を持つし、100%応援すると思います。

 

ですが、そんな自分の個人的な印象は、
本を1/5ぐらい読んだあたりからすっと消えていきました。

 

そう、あの日。
新聞は確かに来たんです。

 

こんな状態では新聞も来ないだろうと思っていたのに、
震災の翌朝、玄関を開けたら、
普通に、新聞が配達されていました。

 

ハッキリ言って、ものすごくびっくりしました。
同時に不遜ですが、本気でこう思いました。
「やるじゃん、河北!」
その気持ちもまた、偽りのない真実でした。
「こんな日でも、新聞は来るんだ・・・」

 

その日の河北新報はものすごく薄っぺらで、
本には「8ページ」と書かれているので、
たぶん、見開きの用紙が2枚分だったのかな?
(記憶にない)

 

ですが、そんなことはどうでもよくて、
私は、「ちょっとお母さん!!新聞来てるよー!」
と、新聞が配達されていた驚きを大声で家族に伝えながら、
急いで部屋で新聞を広げ、再び、えーっ!と、
またまたびっくりしました。

 

30年以内に来ると言われていた宮城県沖地震の再来と感じ、
宮城県だけの被害だと思っていたのが、
その日の河北新報の朝刊を見て、
被害が想像以上に広範囲に及ぶことがわかったからです。

 

その日はすみからすみまで新聞を読み、
まだそのときは生きていたPHSのネット回線に、
すぐにノートPCを繋いで家族とYouTubeの津波映像を、
食い入るように見つめていたことを思い出します。

 

やがてすぐに、ネットは繋がらなくなり、
その後、一週間続いた停電で、
ラジオと新聞しか頼るものがなくなりました。

 

我が家は室内はそれなりに散乱しましたが、
家自体に大きな被害はなく、
しかも、ガス(プロパン)も水道も普段通り使えたので、
仙台市内としては、影響が少ない方だったと思いますが、
停電で電話も携帯もネットもできないことが一番つらく、
あとでわかったことですが、我が家は名取川沿いで、
大きな地区としては被害の大きかった閖上に隣接しているため、
友人達には、大きな心配をかけてしまったようでした。

 

*    *    *    *

 

ひとつひとつの小さな感想は省きますが、
読み終えて自分が感じたことは大きく二つ。

 

①新聞は本当にたくさんの人の手で成り立っていること
②アナログといわれる手法を絶やしてはいけないこと
です。

 

①に関しては、今まで全く意識していませんでしたが、
新聞は記事や紙面を作る人だけでなく、
印刷する人、輸送する人、仕分けする人、配達する人・・・
それに紙を納める業者さんや、
新聞社に食糧を提供している食堂まで、
実に多くの人の手を経て家に届くんですよね。
その事実を改めて再認識したこと。

②に関しては、インターネットのお陰で、
私達はすごく便利に、そして簡単に格安に、
通話したりメッセージをやりとりしたり、
情報を取得したりできるけど、考えてみたらそれらはすべて、
電気とセットだということ。
つまり電気がなければ何もできないってことです。
何かあったら、すごく脆いってこと。

 

そして全般的に言えることは、
非常時は、ほかのエネルギーを必要とせずに、
単独で完結する手法がなければダメだということ。

 

本にも書いてありましたけど、
手書きの原稿、電話が通じず直接現地に安否確認に行く、
ガソリンが欠乏していて取材行動が思うようにできない、
販売店への重要連絡は昔ながらの封筒が復活、など、
エネルギーが補給されないとどうなるか?を痛感したし、
自分自身も実際にそれを体験しました。

 

停電時は仕事で連絡したい人が山ほどいたのにそれもできず、
車はガソリンの残量が気になって、とても使えませんでした。
電気は一週間で復旧しましたが、
ガソリンはまともに給油できるまで3週間以上かかりました。

 

その観点で見れば、新聞は印刷した紙を読者に渡すという、
とてもアナログな情報伝達の方法ですが、
実は、これが一番強力なのだということを思い知らされました。

 

思えば、なぜ過去の歴史がわかるかと言えば、
それは紙に筆で書かれた手書きの書物が残っているからですよね。
やっぱり現物は強いんだな。
なんでもデジタルデータ化しちゃうと、
今現在の歴史は、今後残っていかないんじゃないか?という、
危惧も感じてしまったりします。

 

そんな中で、ふと感じたのは、
新聞と言う手段は、絶やしちゃダメだなぁと思ったことです。
現物が人を介して人手に渡ることの重要性を、
とても感じた本でした。

 

実は最近、私はほとんど新聞を読みませんでした。
必要なニュースや情報はネットで事足りるからですが、
みんながそんなことをしていると、
新聞社は干上がってしまいますよね。
本にも書いてありましたが、
以前は広告収入が販売収入を上回っていましたが、
今はインターネットの台頭で販売のほうが稼ぎ頭
だそうです。

 

新聞と言う手法を絶やさないためにも、
これからは、もっと新聞を読もうと思ったし、
出張で他県に出掛けた時などは、
現地の新聞を買って読もうと思いました。
それがわずかでも、自分にできることかな?
と、思いました。

 

普段は読んだ本について、
ブログに書くことなどない私ですが、
この本は、とても感想を書きたくなる本でした。




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