そうだ、動画を使おう

2011/9/22 青森

前回の記事からの続きです。

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2011年。マナー講師としてスキルも経験もまったくない私がどうやって研修を進めていこうかと思った時に、真っ先に思い付いたのが動画の活用です。

以前にも書きましたが、私はあるマナー講座に参加した時に「お辞儀の姿勢が悪い」と何度か注意をされました。

自分ではその自覚がなかったので不満に思い、試しに自宅の食器棚のガラスの前でお辞儀をしてみたら、本当に姿勢が悪くてかっこ悪いお辞儀だったので衝撃を受けました。そしてその日以降はお辞儀の姿勢に気を付けるようになったんです。

コーチングの研修でもよく話すのですが、人は他人の指摘ではなかなか変われません。ですが、自分が自ら「これじゃダメだ」と気が付けば行動を起こすのです。

ならば動画で皆さんのお辞儀や立ち振る舞いを撮影してその場で再生すれば、スキルも経験もない薄っぺらの私があれこれ語るよりも、はるかに強い動機付けになるはずです。

そしてその動画を見た皆さんは私が指導しなくても自分から「姿勢が悪い」「頭だけ下げている」「手がぶらぶらしている」「全体的に落ち着きがない」などと適切に自分自身を評価してくれるに違いありません。(私がそうだったように)

そこで私は自分が担当するビジネスマナー研修には必ず動画を使うことにしました。いつも持ち歩いている(当時)デジタルカメラで撮影すればSDカードを抜き出してその場で再生できますし、私はこういった機器の扱いはけっこう得意なのです。

そしてこれはほかのビジネスマナー研修との差別化にもなると思いました。

マナーへの動機付け

2011/5/25 札幌

しかしその前に全体的な動機付けの問題もあります。

私は元々お作法やマナーには否定的だったので(今は違います)先のマナー講座に対してはかなり斜に構えていたと思います。ですがそれだとどんな内容を話しても受けれてもらえませんよね。

私は今までの自分を振り返って、どんなときに「ビジネスマナーは大事」と思ったのか考えてみました。

私のこれまでの仕事は、技術職、食材宅配、製造業、電話オペレーターなどで、ビジネスマナーが重視される業務には就いたことがなく、食材宅配の仕事に至っては、敬語を使うのをやめたらむしろ売り上げが伸びるという真逆の体験もしてきました。

基金訓練の生徒さんたちもほとんどは私と同じかもしれません。そんな皆さんに前向きな気持ちで研修を受けてもらうためには「なるほど」と納得できる理由が必要だと思ったのです。

そうやって考えてみると、月並みですがやはり「きちんとした場できちんと振る舞えますか?」という問いかけが一番わかりやすいアプローチかな、と思いました。

もしこれが新入社員研修なら社会人としてのマナーは素直に受け入れてくれますが、今回担当する基金訓練の生徒さんは下は10代上は60代で社会経験も就業経験もバラバラです。

そんな皆さんにしっかり聞いてもらうためには、ただやり方や順番を伝えるだけでなく、どんなシーンでどう役立つか、そして相手はあなたをどう評価するか。そういったことをイメージしてもらいながら進めていきました。

最初の動画撮影で、ほとんどの人が「自分のお辞儀って意外にかっこ悪い」と思っているはずなので、そういった説明を要所要所に挟むことで、他人事とは思わずに聞いていただくことができたと思います。

また、回を重ねるうちにほかの会場の写真や動画も増えてきたので、顔や名札や背景にぼかしをいれながら、いい例・悪い例を表示して印象の違いを感覚的にわかってもらえるように工夫もしました。

倫理法人会のモーニングセミナーで自分の考えが変わった

201/4/18 弘前

毎回、最後は余談になってしまいますが、私がマナーや立ち振る舞いが大事だと思うようになったのは、会社員をやめてからです。

一人で仕事をするようになると名刺交換をする機会が格段に増えますし、経営者の方とお会いする機会も多くなります。

それまでは電話の仕事だったので社外の人に会うことはほとんどありませんでしたが、個人事業主になると会う人会う人に評価される立場に変わり、それが自分の収入(売上)につながるのですから自然に立ち振る舞いにも気を遣うようになります。

そう思ってみると、今までの私がマナーぎらいだったのは、こちらが必要性を感じないままノウハウを押し付けられるようなアプローチに対しての拒否感だったのかもしれません。

それともうひとつ。

独立してすぐに「何かの団体に入ったほうがいい」と考えて倫理法人会に入会したのですが、この会の朝の勉強会(モーニングセミナー)の進行が本当に素晴らしかったのでそれが私にとって非常に大きな勉強になりました。

のちに司会を担当してわかったのですが、モーニングセミナーの進行は全国共通の定められたマニュアルがあり、ベルを鳴らすタイミングも秒数も司会者の言葉も礼の回数もすべて決められています。

また司会者になると声の出し方や立ち振る舞いの練習があり、だらだらしていると注意されます。

私はそれまで「型にハマった物事の進め方」はよくないと思っていましたが、この清々しくキビキビとしたモーニングセミナーの進行がすべてルールに沿って進められていることを知り、「型を守る」ということはとても大事なのだと思うようになりました。

それを理解していただくために、高校生向けの面接対策講座などでは、全員にダラダラとキビキビの2種類のお辞儀をしてもらい、それを動画で再生してその場で見てもらったりしています。

何事もそうですが人は「自分で思わないと動かない」ので、なにをどう見せたらその人の動機づけになるかをいつも考えています。