6月4日㈪は東京都千代田区で、
電気工事会社さんの
メンタルヘルス研修を担当しました。
この研修は、午前に産業医の先生が、
メンタルヘルスチェックについて、
今年度の結果や対応などを解説します。
そして、午後の部を私が担当して、
社内のコミュニケーションや接し方を、
研修形式でお話をしています。
この研修は2013年(平成25年)から担当しており、
今年で6年目になります。
今回のテーマは、「声掛けと面談」です。
メンタルの不調は早期発見が大事ですが、
その土台となるのが、
日頃の相互のコミュニケーション。
それについての、助言やヒントを、
ロールプレイング演習を交えながら、
お伝えしました。
相手の弱さと屈折感を承認できますか?
今回一連の各会場の研修では、昨年、別な主催者さんの別な会場で撮らせていただいたロールプレイングの動画にモザイクをかけて何本か使わせていただいています(相手の方には了解を得ています)
そのときのロールプレイングのテーマは、「自分の主張はいったん脇に置いて相手の話を聞いてみる」というものでしたが、役職者研修だったということもあり、配置換えに拒否感を持つ社員役の方に、担当リーダーが「会社で働くとはどういうことか?」「嫌なことも遂行しなければいけない」と、会話が始まってすぐに言い含めるように話しているものでした。
メンタルヘルスの現場では、リーダーが気にも留めないような些細なことを気にして、苦痛を訴えてくる方がいらっしゃいます。そういったお話を耳にすると、つい、「気にしすぎ」「もっとおおらかに」「仕事とはそういうもの」などと、上に立つ人ほど、慰めたり、励ましたり、説得したりしてしまいますが、実は一番大事なことは、こちら側が一切の自己主張をやめて、聴くに徹する、ということなんですよね。
誤解や偏見や被害妄想はそれなりにあるでしょう。ですが、相手の方にとってそれがもし本当に苦痛であるというのなら、自分の考えはいったん横に置いて、「そうなんですね」と承認する必要があります。でも役職者の方は、これがなかなかできないんですよね。
それは職場を正当に運営する任務を負っているからにほかなりませんが、その責任感すら一時的に手放してしまって、ただ聞く、ただ頷く、ただ共感する。実はそのほうが効果的だったことを私自身が多く経験してきました。
お互いさまの論理
皆さんは返報性(へんぽうせい)の法則って知っていますか?お返しの法則ともいわれますが、人は相手から何かをしてもらうと、自分も同じことを相手にしてあげて、お返しをしたくなる心理のことを言います。
自分を褒めて認めてくれる人には迷惑をかけたくないから頑張ろうと思ったり、どうせ同じ商品を買うなら普段から親切にしてくれるあの人から買おう、と、思ったりする気持ちも、この延長上です。
それを念頭に置いてみると、メンタルヘルス系の面談で大事なのは決して否定しないことなんですよね。批判もせず、反論もせず、「でも」「だから」「何度も言うけど」「さっきも言ったけど」などの言葉は使わずに、ただ、じっくり相手の話をまず聞くこと。キャッチして受容するのに徹すること。
実は上司側が我慢してそういう行動をとると、部下側も段々リラックスして本音が出始め、ときに歩み寄りの発言が出てきたりします。これがまさに返報性の法則なんです。相手が自分の言い分を否定しないと、こちらも相手の言い分を否定せずに吟味してみようと思うのです。
私は前職で、「新人の指導など面倒くさくてやりたくもない、まっぴらごめんだ」と不満ばかり募らせる部下(男性)に、「それもグループリーダーの仕事だから」と、ひたすら理解を請うトークしかしたことがありませんでしたが、毎度毎度、平行線でした。
ですが、コーチングを学び「相手の言い分を承認する効果」を知り、あるとき「そうだよねー。〇〇クンのキャラからしたら、初心者に一からモノを教えるのは向いてないからストレスだよね?」という言葉がふと出ました。
すると〇〇クンは逆に「いや、それもリーダーの仕事ですから」と、妙にシャキッとして言ってきたのです。正直ってびっくりしました。〇〇クンはすべての指示にひとこともふたことも多い反論が返る理屈っぽい人だったので、「仕事ですから」とシンプルに割り切る態度は今まで見たことがありませんでした。
これも私が〇〇クンの気持ちを承認し共感してあげたことで、〇〇クンも私に対して歩み寄る気持ちが芽生えたのだと思いました。人って本当に「お互い様」の論理で動いてるんですね。
メンタルヘルスの面談でも同様に、たとえ相手のために良かれと思って告げた事でも、相手にして見れば単なる押し付けや説教に聞こえるときがあり(メンタルヘルス不全者は物事に対して正常が反応ができず屈折していたりする)、そうなると、逆に頑なになって辛い自分を隠したり、ことさら元気に見せようとする作用が働く気がします。
それではちっともお互いのためにならないし、職場のためにもなりません。手練手管と言えばそれまですが、「ひとまず聞くに徹する」をぜひ試してみてくださいね。
ほかの会場のメンタルヘルス研修はこちら
本日の研修について
研修名:メンタルヘルス研修
タイトル:「誰でもできる声掛けのポイントと引出し方」
テーマ:メンタルヘルス、コミュニケーション
内容:基本の座学とロールプレイング(動画使用)
業種:電気工事業
人数:約20名
時間:3時間
対象者:主にライン管理者の皆様
会場:企業様会議室