2011/4/18弘前のPCスクール

マナー講師は「絶対やらない」と強く二度断った

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会社を辞めてコーチングやコーチングの講師としてひとりで仕事を始めたころ、友人(女性)から電話が入りました。

「笹姉さん(友人は年下なので私をこう呼ぶ)マナーやりませんか?お願いしたい仕事があるんだけど。」

即決で断りました。

マナーが大嫌いでした。

そのころの私は失礼がない程度に振る舞えればそれでいいと思っていたので、「こうじゃなきゃいけない、ああじゃなきゃいけない」といった細かいがんじがらめの考え方に拒否感が強く、今まで必要と思ったこともないし覚えたいと思ったこともないし、そもそも人に教えられる知識もスキルも全くありませんでした。

そのころの私は50歳前後でしたが、そんな年齢になっても私は今まで職場でお客様にお茶を出したことが一度もありません(接客のある業務や立場ではなかった)。なのでお茶の出し方は全然わかりません。名刺は会社から配布されていましたが、ほとんど使わないのでマナーがあることさえ知りませんでした。

なので人に教えるなんてとんでもない!教えるどころかまったくの無知で完全に人並以下だという自覚がありました。

私が立ち居振る舞いに無頓着でマナーに対しても拒否感があるのは友人も知っていると思うのですが、友人の話では「講師がいない」らしいのです。(私は内心、マナー講師なんていっぱいいるでしょ?探し方が足りないんじゃないの?と思いました。)

その後、友人は同じ依頼で再び私に電話をかけてきましたが、前述のようにマナーには興味も関心も一切ないので、二度目も同じように冷たく断りました。

「いわゆるマナーじゃないんです」という友人のひとこと

2011/4/18弘前のPCスクール


この友人はあきらめの悪いしつこい人で(だから役職者にもなれるのだろう)、忘れたころにまた電話がかかってきました。

私はマナーは嫌いであることを強調して改めて断りました。

「だからマナーは嫌いなの。お辞儀とか名刺交換とかお茶出しとかそういうの大っ嫌いなの!嫌いだから知識もないし知らないし仕事として関わりたくないわ!」

すると友人が意外なことを言ったのです。

「笹姉さん、マナーってそういうことじゃないのよ。『いわゆるマナー』じゃないの。お辞儀とか名刺交換とかお茶出しはやらなくていいから。」

へ・・・?・・・? ではなにを?

ここで初めて友人が依頼してきた「マナー講師の仕事」に関心を持った私が、詳しく友人に訪ねてみると以下のような答えが返ってきました。

箇条書きにすると・・・
「・当社では国の事業である基金訓練を受託している。
 ・これは雇用保険未加入の人に無料で職業訓練を実施する国の施策である。
 ・そのためフリーター引きこもりさん就業経験のない主婦などが含まれる。
 ・中には名乗りやあいさつや自己紹介ができない人もいる。
 ・そもそも会話が苦手な人も多い。
 ・そんな人たちに名乗ってあいさつして自己紹介ができるようにしてほしい。」

こんな要旨でした。

え?その程度でよいの?

前職が電話オペレーターだったので名乗ったりごあいさつをするのは普通にできます。そして会話のスキルに関してはまさにコーチングそのものじゃないですか。

対人コミュニケーションがテーマならそれは私が常に関心を持っている分野のど真ん中ストライクです。私はそれを聞いてそういうことならやってもいいと思い始めました。

最大の決め手は「クレームの出ない講師」

2011/4/18弘前のPCスクール

私が軟化したので友人がさらに話を続けました。

「講師と言っても誰でもいいわけじゃなくて、うちはクレームにならない講師がほしいの。」

今回のお仕事は基金訓練制度を利用してWordやExcelや簿記や医療事務を習いに来ている人たちに、面接対策の一環として名乗りやごあいさつや自己紹介を教えてほしいというものでしたが、基金訓練という施策の性質上、他の講習よりも人の質が低く中にはそれなりに変わった方や卑屈な人もいらっしゃるとのこと。

友人の話しぶりから察するに、そういった人たちに対して過去に何度か行ったビジネスマナー研修では、講師が上から目線だったり、口調が厳しかったり、何事にも「ねばならぬ」を強調しすぎたせいで、不快に感じた方からどうやらたぶん国のほうにクレームが入ったらしいのです(あくまでも推測です)。

ああ、その気持ちは痛いほどわかります。私も過去にお付き合いでマナー講座に参加したことがありますが、同じ理由で心の中は不満だらけでした。

基金訓練の対象になるような方達は自己価値が低かったり社会に対して劣等感をお持ちの方もいらっしゃると思うのでなおさらだと思います。(私はマナーが嫌いなのではなくマナー講師が嫌いだったのかもしれません)

そして(今となってはうろ覚えですが)受講者からクレームが入ると次の受託にも響いてくるので、それだけはどうしても避けたい、ということでした。

友人が電話で何度か口にした「クレームの出ない講師」「クレームを出さない講師」「クレームにならない講師」というキーワードは私の心情に多大にヒットしました。

マナーに関心があってマナーを学ぶことが好きな人にはこの気持ちはわからないかもしれません。ですが私はマナーが嫌いです。マナー講師と言われる人たちのあの鼻持ちならない雰囲気も大嫌いです。

そんな私なら(いや私だからこそ)生徒さんの心情を理解しながらより受け入れてもらいやすい伝え方ができるのではないかと思いました。

しかも今回は私にとって完璧に未知の項目であるお辞儀も名刺交換もお茶出しも不要なのです。

そしてなんとこのお仕事は1年間続きました

「Oさん、私、それ、やるわ」

友人の説明が終わるころには私はすっかりやる気になって、友人には最後に引き受ける返事をしました。

でもこのときはまだ、この仕事が1年間も続くなんて思ってもいませんでした。

掲載した三枚の写真はこのお仕事を引き受けて最初の頃(2ターンまたは3ターン目)の写真です。マナー講師なんてやったことなかったので、何を着たらいいのかわからず、今見ると着ているものが変ですね・・・

結果的に私はこの友人の依頼がきっかけで、毎月友人が役職者を務めるPCスクール(北海道1、青森県5、宮城県1/当時)を7か所回って基金訓練の生徒さんにビジネスマナーを教えていくことになるのですが、それは今思えば良くも悪くも本当に「鍛えられた」1年間でした。

今となってはこの仕事を私に振ってくれた友人に本当に感謝したい思いです。

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