業種によって全く異なるクレーム応対

クレーム応対の本がたくさん出版されていますが、実際に手に取ってみると、自分の仕事にはあまり役に立たない、と感じられる方も多いのではないかと思います。多くの法人様の電話応対指導や研修を担当してみて痛感するのは、クレームの質もベストな対応方法も、業種や業態によって全く異なるということ。

中規模以上の電気工事や設備メンテナンスのように、現場での作業を伴う業種では、丁寧に謝ることよりも対策の明確な提示とスピードが重要になります。お客様のほとんどが常にやりとりのある法人顧客であるため、謝罪よりも、担当者がどれだけ早く現場に到着するか?のほうが大事なのです。どちらかと言えば、感情面に配慮するよりも、采配の速さと事務処理の手際が求められるでしょう。

一方、ネットショップのクレームは、ほとんどが商品の不良やピッキングミス、そして配送遅延への苦情です。お客様は個人の方が大半で、しかも「友人の結婚式に使いたかった」「〇〇のお祝いに贈りたかった」など、時間に制限のある限定された目的で購入される方も多いため、トラブルが発生した時の怒りや失望感が大きく、感情的になりがちです。

また、ネットショップの場合は、交換・返品も発送を介したやりとりになるため、手続きも煩雑ですし、返金に関してもタイミングによってはひと月以上もかかってしまい、そこで新たなクレームに発展することも少なくありません。そのため、ネットショップのクレームの場合は、お怒りのお客様をクールダウンさせる手法や、シンプルでありながら説得力のある説明表現などが求められます。

上記は、私が直接指導を担当している会社様の一例ですが、お読みいただいてわかるように、クレームというのは、内容も応対もそれぞれに大きな特性があり、とても一般論で語れるものではありません。

 

 

イレギュラーな対応が求められる顧客応対と電話力

電話応対は会社の印象を左右すると言われていますが、ルーチンに沿った平常業務だけ続く仕事であれば、会社全体の応対品質がさほど高くなくても、大きな問題にはなりません。そのため、通販会社等で注文受付がメーンの大規模コールセンター(インバウンド)の場合は、温かみのある発声や柔らかい口調などが重視されます。受付手順やトークの文言はだいたい決まっているので、受付担当者が持っている雰囲気の良しあしを、お客様は敏感に感じ取られると思います。

ですが、一般会社の事務職の皆さんは、そういうわけにはいきません。受ける電話もあればかける電話も多数ある中で、納期が早まったり遅れたり、発注した商品が届いたり届かなかったり、急ぎの仕事が突然入ったり逆に大きな仕事を失注したり。FAXやプリンターやコピー機の調子が悪く、思ったように仕事がはかどらないときもあるでしょう。今はPCの不調も大きなストレスになりますよね。そんな中でお客様対応を行い、クレームを処理し、事務スタッフの電話応対はイレギュラーなことばかり。特にBtoBの会社さんは、敬語などに細心の注意など、払っていられない現実がありますし、むしろ重要なのはそこではありません。

 

応対レベルの均一化とケーススタディの個人指導が大事

どの会社様でも、お客様が不満を感じたり、ときどき応対クレームをつくってしまうスタッフの顔ぶれは常に同じです。10人のうち9人までが素晴らしい応対をしても、たったひとりのクレームをつくりやすいスタッフが会社の評価を落としてしまうのは、非常によくあることです。

クレームをつくりやすいスタッフは、努力や”やる気”の有無というよりも、動的に流れていく音声情報に弱いという個性を持ち、非言語情報のとらえ方が他の人と違うケースが多いです。音声情報には弱くても、固定的な情報や文字情報には強いので、たぶんその方は、PCが得意だし、システマティックな作業にはめっぽう強いのではないでしょうか?

電話応対レベルを均一化するためには、実はそういった個々の資質を見極め、一人一人の特長に合わせた個人指導が効果的です。私はプロコーチ(コーチング)でもありますが、電話応対の個人指導はまさにコーチング。まず最初に自分の特性を認め、自らの課題を指導者と共有しながら、指導者の暖かい支えの中で、自ら工夫や努力ができるようになります。

経験上言えることですが、電話応対は決して頭ごなしに叱ってはいけません。苦手意識が強くなり、電話対応が嫌いになったり、お客様対応を避けるようになります。また、自分の対応でミスやトラブルが発生しても、正しい報告が上がってこなくなるため、会社としての対応が後手に回ってしまう可能性もあります。

電話応対の能力の差は、持って生まれた個人差によるところが大きいため、通常の座学ではなかなか均一化がはかれません。知識やマナーを伝えるよりも、いかに早く自分の特質に気付き、素直に受け取ることができるかどうか、が、指導の第一歩だと思っています。

 

 

ワッツ・ビジョン(笹崎久美子)の電話応対指導/研修は・・・

グループ指導、個人指導、いずれも可能です。

実践的なトレーニングを最重視します
事前にミステリーコールを行います(録音します)
ご自身の電話応対の録音を聞いていただきます
各自の強みと課題を洗い出し、指導者と共有します
テーマを決めて次回の指導日までに取り組みます
グループまたは個人の状況に沿ったピンポイント研修を行います
参加者に事例を募り、業務でありがちなロールプレイングを何度も行います

※クライアント様の業種やスタッフの皆さんのレベルに合わせてご提案いたします。
※詳細は、メールフォームにて、お気軽にお尋ねください。

単独の社員指導、社員研修、講演講師もお引き受けしています。

●新入社員研修や新人スタッフ研修で基本マナーをお伝えします
●十分なヒヤリングを基に業種に特化したクレーム対応研修、講演を行います
●大人数でもロールプレイングは必ず行います

メディア掲載実績はこちらをご覧ください。
※詳細は、メールフォームにて、お気軽にお尋ねください。

 

  【内緒のウラ話】受講者もミステリーコール”する側”を体験!

電話応対を向上させるために効果的なことはたったふたつ。①自分の応対を聞くこと、②他人の応対を聞くこと、です。電話応対は言語のトレーニングでもあるため、「耳で聞いて感じ取る」ことが一番重要なんです。そこで、指導の際は、自分の録音を聞くだけでなく、同業他社様に簡単な問い合わせをするなど、実際にお客様になって電話をしていただくことも行っています。

あるネットショップ様の事例では、その演習を通じて、今まで自分たちが使ったことがなかった印象のよい表現や、安心感のあるご注文の承り方、ご希望の商品が完売だった時の絶妙なトークなどを始めて体験し、さっそく自社でも取り入れました。

「意識して聞く」って本当に大事ですよね。社員の皆さんもお家に帰れば一個人です。そういったシーンでコールするプライベートな問い合わせは、言われた内容だけしか頭に入って来ないものですが、プロ意識を持って先方のトークに耳を傾けると、素敵な表現にたくさん出会いますし、気になる言い回しも瞬時に気が付きます。

そういった経験を経て、社員の皆さんの意識が向上し、クオリティへの感覚も研ぎ澄まされて行くんです。